■2025年7月27日:青空の河 及び続編
著者の穴吹智は、陸軍飛行第五十戦隊の三羽鳥、
運の穴吹、腕の佐々木、度胸の下川と言われた戦闘機操縦者のうちの一人である。
総撃墜数は51機を誇り、黒江保彦と陸軍エースの座2位を分け合う。
本書は著者が隼戦闘機を通じて戦った全期間を詳述した戦記だ。
本編から続編へは明らかに続いており、一緒に読んでおいたほうが良かろうと思われる。
肩先に刺さった爆弾の破片を飛行中に素手で引っこ抜いたり、
被弾して血だらけのまま弾丸切れの隼でB-24の機体に馬乗りになるなど、
常人には考えられないような敢闘ぶりをする。
なにしろ味方は「零戦野郎」、敵は「ハリケーン野郎」ときたもんだ。
気迫のほどが知れるというものだ。
戦友の死を眼前にして、
−−−思えば短い短い人生であった。しかし、それが当時の若者の現実であった。
と悲憤するシーンがある。
現代とは間違いなく違う時代の話だ。
しかし、同じ日本人であったのだ。
著者は敵機を撃墜するたびに、敵に対して弔辞を述べている。
現代の「貧困」「ブラック企業」「パワハラ」に代表される
生ぬるい世界に生きる我々は、それこそ本書を読んで襟を正すべきであろう。
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